
トヨタ紡織株式会社
新領域開拓部 グループ長 博士(農学)
田畑 和文 氏
出展前に感じていた業務上の課題とは?
早速ですが、田畑様の立場や役割を教えてください。
(田畑氏)
私は新領域開発部のグループ長をしており、新しい事業の種になることを作ろうとしています。
弊社はもともと、自動車の内装メーカーですが、培われた技術で、世の中の役に立つことを作ろうとしています。そういったなかで、食料をキーワードに取り組んでいました。
食料の生産性を高める技術を作ろうと取り組んでいるところで、今回の出展では、開発した結果の一部を紹介しています。
田畑様は商品開発から販路拡大まですべてを手がけているのでしょうか。
(田畑氏)
私は研究者ですから、“研究”と“できたものを外に出す”ところまでが担当です。
出展前に感じていた業務上の課題にはどんなものがありましたか。
(田畑氏)
今回が初めての出展です。
しかも、出展する商品は、まったく初めての概念を提案したものです。
見に来てくれる方たちがどんな反応をするのかが、正直分からず、不安を感じていました。
出展に至った背景などお聞かせいただけますか?
(田畑氏)
われわれが今、扱っているのは起潮力という月のリズムから来る力です。
これを農業に生かそうと考えました。
しかし、われわれが実験で得た結果を実際に農業の場で使用してもらわなければ、本当に効果があるかどうかが確認できません。
そこで、こういう展示会でいろいろな方の目に留めてもらい、試してもらおうと考えたわけです。
この展示会を知ったきっかけは何でしょうか。
(田畑氏)
共同出展している小林クリエイト様に紹介いただきました。
起潮力とはどんなメカニズム?
出展の決め手は、何でしたか?
(田畑氏)
他のイベントに小林クリエイト様と共同出展した際、反響が割合大きく、テレビや新聞の取材を受けました。その経緯もあって、今回も共同出展する運びとなりました。
実際に出展してみていかがでしょうか?
(田畑氏)
過去に参加したイベントと異なり、今回はジビエなどいろいろな内容の展示があり、当社の製品が受け入れてもらえるか心配もしましたが、あまり違和感はありませんでした。
展示会で見てもらいたいポイントはどこにありますか。
(田畑氏)
起潮力というちょっと耳慣れない言葉ですから、それについて興味を持っていただきたいと考えています。
重力を農業に活用するとどうなる?
重力を農業に活用するわけですよね。
(田畑氏)
太陽と地球、月が動く中、月と太陽の引力、地球の遠心力で海面に変化が出ています。
このほか、目に見えないものとして、気圧や重力にも影響があるのです。
そういう天体の動きを栽培に取り入れていこうとしています。
光の環境因子を制御するという考え方にもなります。
昔からの伝承がそれにぴったりだそうですね。
(田畑氏)
伝統農業では月の暦が非常に重視されてきました。
このほか、目に見えないものとして、気圧や重力にも影響があるのです。
優れた農家はそれを経験則として持っています。
経験則は口伝えで次の世代へ受け継がれています。
それが科学的に解明されていないだけで、事実であることに変わりありませんから、解明しながら応用していけばいいことなのです。
自動車の内装メーカーと伝統農業の経験則を科学的に解明することは、とてもかけ離れている感じがします。どういうきっかけがあって、結びついたのでしょうか。
(田畑氏)
うちは自動車の内装部品を作っていますが、その中に植物由来の素材が含まれています。
ケナフという植物です。
そこから採れる繊維と樹脂を混ぜると、軽量化した部品ができます。
しかも、強度が上がっているのです。
その結果、燃費の向上に大いに役立っています。
それで、ケナフの生長観察をしているときにケナフの生長スピードと月のリズムがシンクロしていることに気づきました。
それでこれは使えるのではないかと思い立ちました。
そういう経緯があったわけですね。様々な分野の技術が、農業分野に応用され新たな領域を開発されている事例をご紹介いただき、ありがとうございました!