【デリカフーズ】ポストコロナでのスマート・フード・チェーンの最重要課題④
デリカフーズ株式会社
事業統括本部 品質保証室長
有井 雅幸 氏(薬学博士)
4.新たな価値創造を目指した野菜品質評価指標
~デリカスコアを事例として~
デリカフーズ・グループでは、形や色などの外観だけでなく中身に基づいた野菜評価を実施するために、十数年間にわたり野菜の中身評価を行い、指定野菜を含む各種国産野菜に関する数万検体の分析データを保有しています。この国際的にも屈指のデータベースを駆使することで、国内外の産地で生産された野菜が、季節毎の国産野菜(平均値)と比較して、安全や美味しさ、栄養価、機能性に優れているかどうか、数値として見える化できるようになっています。「旬の野菜」が美味しくて健康にも良いことを科学的に示すことができ、また同じ旬でも、土作りや栽培方法など圃場・産地によって中身が異なることもわかってきました。そこで、消費者/実需者ニーズに基づき、野菜の中身評価を中心に、安全・栽培・流通等に関する19項目からなる新たな野菜品質評価指標「デリカスコア」を構築し、運用してきました。
単なる野菜取引基準ではなく、多様化する野菜ニーズを評価するツールとして、また、サプライチェーン全体の物差しとして、更には、より付加価値の高い野菜生産を目指す取組み指標として、契約産地への導入を進めています。
<デリカスコア(安全)> 残留農薬、有害微生物、有害重金属、栽培履歴など
農産物の安全性は消費者の大きな関心事であり、生産者や加工・流通業者は、食品衛生法等に基づきその確保が義務付けられています。農薬はもとより、食中毒を引き起こすO-157 腸管出血性大腸菌やサルモネラ菌、黄色ブドウ球菌、ノロウイルスなどにより農産物が汚染されることを防ぐとともに、水銀やヒ素、鉛、カドミウムなどの有害重金属に侵された土壌・培地での農産物栽培を避けることは必須です。
<デリカスコア(栽培)> 生産量・安定供給、土づくり・栽培技術、環境配慮
野菜生産は気象の影響を大きく受けるため、年間を通して安定的な供給量と価格を確保することが大切です。また優れた農業技術(土づくり、栽培技術など)の継承が難しい近年、それらの課題を解決し、食に対する消費者ニーズの多様化にも対応して行くことが重要です。更に生産性を保持しながら持続的に農業を行っていくには、環境への配慮も欠かせません。
<デリカスコア(中身成分)> 糖度、ビタミンC、抗酸化力、硝酸イオン
「安全で、美味しく、健康に良い」との野菜に対する消費者ニーズに基づき、美味しさとして「糖度(Brix)や酸度」、栄養素として「ビタミンC やβカロテン」、機能性として「抗酸化力(DPPH法、ORAC法、ESR法など)」、また施肥適切化の一つの指標として「硝酸イオン(硝酸態窒素)」を評価しています。
<デリカスコア(流通)> 鮮度、外観、品温/冷蔵施設・設備
野菜の鮮度保持・菌数管理に最も効果的な条件は低温を保ち湿度をできるだけ下げないことですが、品目によっては低温や高湿度により障害(生理障害)を受ける野菜もあります。収穫後の鮮度を高く保持するためには、産地~流通~消費に至るすべての過程において、適切な温度/湿度管理が重要です。
Profile

有井 雅幸 氏
デリカフーズ株式会社
事業統括本部 品質保証室長
出身地
兵庫県神戸市
最終学歴
東京理科大学 大学院 薬学研究科 博士課程修了(薬学博士)
職歴
公益財団法人 癌研究会癌研究所(特別研究員)
キッコーマン株式会社(機能性食品グループ長)
(その間の役職)
公益財団法人 日本健康・栄養食品協会(評議員)
健康と食品懇話会(副会長)
内閣府 食品安全委員会/厚生労働省リスクコミュニケーション パネリスト
農林水産省 食料産業局 食品安全マネジメント等推進に向けた準備委員会委員
農林水産省 消費・安全局 食品トレーサビリテイ検討会委員
農林水産省 生産局 農業資材審議会専門委員
農林水産技術会議 異分野融合(情報インフラ構築)研究戦略検討会委員
日本GAP協会アドバイザー